OKCの激動の2シーズンを振り返る

2019年のオフシーズン、サンダーはポールジョーのトレード要求から一気に再建の方向に向かいました。まもなく主力のジェラミグラントフランチャイズプレーヤーのラッセルウエストブルックを立て続けにトレード。代わりにシェイギルジャスアレキサンダーダニーロガリナリ、クリスポール、将来の1巡目指名権を獲得。

2019-2020シーズンは高齢で衰えの見え始めたクリスポールの処遇に注目が集まりますがポールはサンダーでプレーすることを決意し、リーダーとしてサンダーを牽引。ポール、アレキサンダー、シュルーダーの3ガードラインナップを採用したドノバンの采配も冴え渡り、下馬評を覆してウェスト第5シードでプレーオフに進出。プレーオフでは第4シードのロケッツと第7戦までもつれる死闘を演じた末、敗退しました。



2020年のオフシーズンは前オフシーズン以上の激動のオフとなります。見事にカムバックを果たしたリーダーのクリスポール、フランチャイズプレーヤーのスティーブンアダムス、デニスシュルーダー、ダニーロガリナリら、主力選手をいっせいに放出。ドラフトではトレードアップをしてセルビア人のアレクセイポクシェフスキー、フランス人のテオマレドンらを指名。チームはヘッドコーチをビリードノバンから若いマークダグノートにシフトし、次のシーズンを明確な再建シーズンと定めました。

2020-2021シーズンのスターターはPGジョージヒル、SGシェイ、SFドート、PFべイズリー、Cアルホーフォード。若手のシェイ、ドート、べイズリー、マレドン、ポクシェフスキーらを育てながら、ベテランのヒルやホーフォードがサポートする体制を構築。シェイが新エースの座を確立し、昨シーズン2way契約から主力の座を掴んだドートが更に成長を加速させるなど序盤戦は善戦。しかしシェイの怪我を境にチームはタンクへと向かい、ジョージヒルをトレード、ホーフォードをシーズン終了まで出場させない方針を取りました。



2021年のオフシーズンはかねてからドラフトに注目が集まっていました。今回のドラフトは例年より優秀な選手がエントリーする予定だったからです。その中でも再注目がオクラホマ州立大学の大型ポイントガードのケイドカニングハム。1位指名が確実視される彼をサンダーは狙っていましたが、ドラフトのロッタリーで不運にも6位指名権を当ててしまったことで彼をドラフトすることが出来ませんでした。代わりにサンダーは6位指名権でオーストラリア出身の大型ポイントガードのジョシュギディを指名。続いてトレ・マン、ロビンソンアールらを指名しましたが、16位指名権をトレードした件も含め、サンダーファンにとって賛否の分かれるドラフトとなりました。

※8月5日現在のサンダーのロスター

PG:ギディ/マレドン
SG:シェイ/トレ・マン/タイジエローム
SF:ドート/ケンリッチ/アーロンウィギンス/チャールズブラウン
PF:べイズリー/ポクシェフスキー/ロビー
C :フェイバース/ロビンソンアール/ムスカ

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【考察1:ジョージとラスのトレード】
2019年のオフシーズンにサンダーは契約が残り2年+プレーヤーオプション1年の残るジョージをクリッパーズにトレードし、シェイ、ガリナリ、1巡目指名権5つ、指名交換権2つを得ました。1回戦負けに終わった前シーズンからの変化が求められるものの、ウエストブルックやアダムスの重たい契約がのしかかり、身動きが取れない状況でのスターの放出は大きな驚きでした。結果的にウエストブルックまで放出してしまったこのオフシーズンのプレスティGMの動きは見事でした。シェイ、ガリナリ、ポールらは今までのサンダーにいなかった新しいタイプの選手で、彼らが既存の戦力と融合したことで、下馬評を、覆す好成績を残しました。
もし仮にジョージをトレードしていなかったらどうなっていたでしょうか。仮にジョージ、ウエストブルックらを中心にもう1年頑張ってプレーオフに出れたとしても、一回戦を突破するのは厳しかったと思います。2018-2019シーズンのサンダーは明らかに手詰まりになっていて、新しい上積みも期待できそうにありませんでした。ウエストブルックのプレーは見るものを魅了するのとは裏腹にそのプレースタイルがプレーオフの結果につながらないことが明白になりつつありました。ジョージのトレードからウエストブルックのトレードに波及した流れは非常にスムーズでした。11年間サンダー一筋のオールスターフランチャイズプレーヤーを放出するのは簡単なことではなかったと思います。もしプレスティの決断が少し遅れていたら、サンダーの2019-2020シーズンのようなエキサイティングなシーズンは見れなかっただろうし、再建も遅れをとることになっていたでしょう。



【考察2:2020-2021シーズン後半のタンクムーブ】
前シーズンから明らかに戦力が落ちたはずのサンダーでしたが、シェイやドートらの活躍、新ヘッドコーチのダグノートの優秀な采配によって予想を超える成績を残していたシーズン前半戦。後半戦でチームのメンターで、優秀なセンターのホーフォードを健康であるにもかかわらずシーズン終了まで出場させない方針を取りました。それに加え、エースのシェイが怪我で欠場し始めたことによってチームは負け続けます。結局シェイはシーズン終了まで出場することなくシーズンを終えることになりました。
このタンクムーブは「健康な選手を試合に出さないのは選手が可哀想だ」という否定的な意見を多く呼びました。ドラフトロッタリーでサンダーが1位指名権をひけなかった際もサンダーを嘲笑する他チームのファンがたくさんいました。それに引きずられるようにサンダーが今回のドラフトで全体6位で指名したジョシュギディに対して、ファンですらネガティブな反応をみせています。
個人的タンクがスポーツマンシップに反することを理解しつつも、理解出来るものと捉えています。弱いチームがドラフトで上位指名権をひける可能性が上がる、というリーグのルールがある以上、ドラフト戦略はチームを強くする確実な手段です。特にFAで選手を呼びずらいオクラホマのような田舎のチームにとってはなおさらです。昨シーズンにおいてもサンダーを含め、6チームがタンクをしていました。タンクをしていたのはサンダーだけでなく、今回1位指名権を獲得したピストンズにも言えることです。



【6位指名権でジョシュギディを指名→16位指名権をトレード】
ドラフトが始まるまで、モックでの6位はジョナサンクミンガ、スコッティバーンズ、ジェームズボークナイトが候補に上がっていました。
4位でバーンズが指名されたことで残りの2人のうちいずれかを指名するだろうと予想されていましたが、プレスティはジョシュギディを指名。ギディはモックでは10位から20位予想だったのでこの指名大きなサプライズでした。
かねてからサンダーは大型のポイントガードのケイドカニングハムを狙っていまたこともあり、ギディはチームのニーズに合う選手でした。しかしまだ完成度の低い素材型の選手のため、6位での指名はファンですら予想出来ませんでした。カニングハムと比べると見劣りしてしまうものの、トレードアップができなかったことを考えると、6位で指名できる選手の中で最良の選手を選んだと信じています。サンダーは一昨年のべイズリー、去年のポクシェフスキーに続いて3年連続で素材型選手の指名をしたことから、時間をかけて選手を育成しようとしています。ギディが1年目からオールルーキーチームに選ばれる可能性は低いかもしれませんが、上手く育成すればフランチャイズプレーヤーとして活躍出来る素地も十分にあります。
ギディの指名と同様に議論を呼んだのが16位指名権のトレードで将来の指名権を2つ獲得した動き。トレード先のロケッツはトルコ人ビックマンのシェングーンを指名。サンダーはロスターにセンターが不足していたため、シェングーンの指名は多くのファンにとって非常に魅力的に映りました。サンダーはなぜシェングーンを指名しなかったのでしょうか。
推測できることは、サンダーが来シーズンもタンクを考えていること。シェングーンが、サンダーが理想とするビックマンではなかったことも考えられます。いずれにしても来シーズンもサンダーは我慢のシーズンが続きそうです。しかし、育成という観点で見ればギディは注目だし、その後に指名したトレ・マンやロビンソンアールも期待できそうです。(ドラフトの後、サンダーはトレードでジャズからフェイバースを獲得。ドラフトの前にトレードが決まっていて、シェングーンをスキップした可能性が浮上しました。)





GMのプレスティは2019年のオフシーズン、ウエストブルックを放出した後、「(再建で)近道をとるようなことはしない」と言いました。それには「多くの痛みがともなうかもしれない」とも語っていました。今後プレスティはどのようにしてサンダーを再び強豪チームに作り替えていくのか、無数にある指名権をどのように活用していくのか、注目が集まります。